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【SS】女「筆おろししてあげよっか?」青年「ありがとうございます!」

1: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:02:09.530 ID:u4gljRDf0

青年(僕は修行中の筆職人……)

青年(なんとか一本完成させたけど、僕の筆を使ってくれる人なんていないだろうな)

女「あらあなた、いい筆持ってるね。それまだ使ってないでしょ」

青年「あ、はい……」

女「よかったら、筆おろししてあげよっか?」

青年(筆おろし……新しい筆を初めて用いることだ)

青年「いいんですか、ありがとうございます!」

女「じゃあ、この紙で……」

2: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:05:08.093 ID:u4gljRDf0

青年(なにを書くんだろう?)

女「うーん、そうだなぁ……」

女「決めた」サラサラッ

青年「!」

青年(なんて綺麗な字を書く人だ……!)

女「できた!」

 

4: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:08:11.918 ID:u4gljRDf0




青年「これは……」

女「“伏竜鳳雛(ふくりょうほうすう)”、まだ世に出てない大人物や有望な若者を指す言葉よ」

女「つまり、君のこと」

青年「え……」

女「この筆、君が作ったんでしょ? とってもよく出来てたわ」

女「これからも頑張ってね」

青年「は……はいっ!」

 

6: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:11:54.175 ID:u4gljRDf0

父「よいか、毛は筆の命だ」

父「目と指でよりよい毛を選び抜くところから、筆作りは始まっているのだ」

父「この毛の選別は経験だけがものをいう。ひたすら研鑽を積み、感覚を養わねばならん」

青年「はいっ!」

父「……ん? どうした、今日はやけに気合が入ってるな」

青年「実は……」

 

8: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:12:31.078 ID:QvhXNyzir
マジで筆じゃねーか!

 

9: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:13:57.048 ID:8DWXhlsE0
お前らエロに釣られて裏切られたからって素直に発狂しすぎだろ

 

10: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:14:40.094 ID:u4gljRDf0

父「その娘はおそらく、今話題の女性書道家であろう」

父「ほら、雑誌にも出てる」

青年「あっ、この人だ! 知らなかったとは恥ずかしい……」

父「そのような人に褒めてもらえるとは、お前も少しは上達したようだな」

父「だが、ワシからすればまだまだ未熟。修行を怠ってはならぬぞ!」

父「筆の道は長く険しいのだからな! ワシですら道の途中にある!」

青年「はいっ!」

 

11: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:17:20.284 ID:u4gljRDf0

……

青年(あの人が、この近くで一日書道教室をやると聞いて、見に来てしまった)

ワイワイ…

青年(たくさん人がいる……やっぱり人気なんだな)

係員「参加される方ですか。こちらへどうぞ」

青年「あ……すいません」

司会者「お待たせしました、まもなく書道教室を開催いたします」

女「どうもこんにちはー!」

女「本日、一日講師を務めさせて頂きます! これを機に、ぜひ書道に興味を持って下さいね!」

パチパチパチパチパチ…

 

12: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:19:24.572 ID:u4gljRDf0

少女「これはどうですか?」

女「うん、よく書けてるね。だけど、ここはちゃんとハネないとね」

少女「あ、そっかー!」

学生「どうですか?」

女「ちょっと墨をつけすぎかな。ほら、にじんで形が崩れちゃってる」

学生「しまったなー」

 

13: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:22:03.085 ID:u4gljRDf0

女「あら!」

青年「こ、こんにちは」

女「来てくれたんだ。嬉しいよ」

青年「あ、いや、ハハ……」

青年「すごいですね。こんなに大勢があなたの教室に集まって」

女「おかげさまでねー」

女「これで、もっと書道に親しみを持つ人が増えてくれるといいんだけど」

 

14: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:25:08.258 ID:u4gljRDf0

女「ああ、それとね。この間の筆は本当によかったよ」

青年「ありがとうございます、嬉しいです!」

青年「まだまだ修行中の身ですけど、励みになりますよ」

女「書道は厳しいけど、筆職人の道も厳しいみたいだね」

女「よかったらまた会えない? 筆職人の人と会うチャンスなんて滅多にないし」

青年「是非!」

書道家「……」

 

15: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:28:07.521 ID:u4gljRDf0

書道家(なぜだ……)

書道家(なぜ、あんな小娘の教室の方が、私の教室より盛況なんだ……)

書道家(納得いかん!)

書道家(私の方が実力もキャリアも知名度も、遥かに上のはずなのに!)

書道家(アイドルじみた人気で、皆の注目を勝ち取るなどという汚い真似をしおって……)

書道家(あの女の存在は書道への冒涜に他ならん!)

書道家(このままではすまさんぞ……!)

 

16: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:31:34.858 ID:u4gljRDf0

女「お待たせー」

青年「ど、どうも……」

女「どこ行く?」

青年「じゃあ、一緒に色んな書道道具を見て回りませんか」

女「さんせー!」

 

17: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:34:09.649 ID:vU48U6//0
それで

 

18: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:34:37.625 ID:u4gljRDf0

女「わっ、この文鎮おしゃれー!」

青年「今は色んな文鎮があるんですね」

女「和紙のザラザラ感はクセになるよね~」サワサワ

青年「分かります分かります」サワサワ

青年「これ……僕の父さんが作った筆です」

女「すごい出来栄え……。龍のお父さんはやっぱり龍なんだね」

 

20: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:40:14.145 ID:c3VYPV2S0
>>18
ワーコノブンチンオッシャレー一生聞かなさそう

 

19: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:37:12.151 ID:u4gljRDf0

女「今日は楽しかったー」

青年「僕もですよ」

女「ところで、今日君を誘ったのはデートしたかっただけじゃないの」

青年「え?」

女「今度私、大勢の前で“未来への一筆”っていうイベントをやるんだけど……」

青年「未来への……すごいですね」

女「そのイベントに、あなたの筆を使いたいの」

青年「ええっ!?」

 

21: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:40:17.926 ID:u4gljRDf0

青年「そんな……僕なんかまだまだ未熟で……」

青年「それなら父さんの筆を使った方が……」

女「未熟っていうなら、私だってまだまだ未熟だよ」

女「それに未熟な筆を使ってこそ、より希望に満ちた“未来への一筆”が書けると思うんだ」

女「私は今の自分を、あなたの筆で表現したい」

女「ダメ、かな?」

青年「……」

 

22: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:41:02.632 ID:QDopSEBX0
いいね見てるよ

 

23: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:42:22.242 ID:u4gljRDf0

青年「分かりました」

青年「僕、あなたのために精一杯筆を作ります! 持てる力の限りを尽くして!」

女「お願いね!」

――――

――

 

24: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:43:17.178 ID:nNzjYvRF0
よきかな、よきかな

 

25: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:48:00.469 ID:u4gljRDf0

青年(筆作りは“選毛”から始まる……)

青年(作る筆に合わせ、必要な毛を選んでいく)

青年(選んだ毛は煮込んで柔らかくした後、完全に乾燥させる)

青年(これらの毛はまっすぐにするため“毛もみ”をし、さらに火のし(アイロン)をすることで)

青年(毛のクセと油分を取り除く……)

青年(手もみが終われば“毛寄せ”だ。悪い毛を取り除き、毛を綺麗に揃えていく)

 

26: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:49:27.754 ID:u4gljRDf0

青年(綺麗に揃えた毛は、クシですき、もつれている毛を平たく整える)

青年(筆の穂の長さに合わせて、ハサミで毛を“寸切り”する)

青年(出来具合を確認したら、“練り混ぜ”の工程に移る)

青年(練り混ぜることで、毛を均一に混ぜ合わせることができる)

青年(そして“芯立て”、穂がバラバラにならないよう毛をのりづけする)

 

28: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:51:47.092 ID:u4gljRDf0

青年(“芯立て”が終わり乾燥させたら、この芯毛の上に化粧毛という綺麗な毛を被せる)

青年(“上毛着せ”が終わったら、“お締め”だ)

青年(穂の根元を焼きゴテで焼いて、麻糸で強く締めつける)

青年(仕上げは筆軸の内部を小刀でえぐり、穂を取り付ける)

青年(そして未熟ながら僕が作った筆だと銘を印したら……)

父(ふむ……熱心にやっておる)

 

29: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:52:52.811 ID:JWSXyeYRd
みてないぞ

 

30: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:53:18.322 ID:u4gljRDf0

青年「……出来た!」

青年(なんとか女さんの書道イベントに間に合った!)

青年(明日は直接この手で届けに行こう!)

父(よくやったぞ……息子よ)

 

31: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:56:10.466 ID:u4gljRDf0

次の日――

青年(この駅で降りれば、イベント会場はもうすぐだ)

青年(ここからは歩いて……)

DQN「待ちな」

青年「な、なんですか?」

DQN「見て分からねえか? お前に絡んでんだよ」

青年「お金ですか? 分かりました、少しならあるから……」

DQN「いや、金なんかいらねえ。欲しいのはその筆さ」

青年「!」

 

32: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:56:34.685 ID:QDopSEBX0
トラップか

 

33: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:56:58.711 ID:C99bEl9hr
みてる

 

34: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 18:58:12.688 ID:u4gljRDf0

青年「なんで……? いっとくけどこの筆になんの価値もないぞ。売ったって二束三文だ」

DQN「いいからよこせよ。大人しくよこせば、なにもしねえからよ」

青年「こ、これはダメだ! 絶対渡さない!」

DQN「ふうん……」

DQN「だったら……手荒になるぜ!」

 

35: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:02:01.224 ID:u4gljRDf0

司会者「まもなく、女さんによる“未来への一筆”が披露されます!」

司会者「準備はよろしいですか?」

女「ええと、それがまだ……」

書道家「……」

書道家(届くわけがない)

書道家(お前に筆を届けようとしてる若者は、今頃私の雇ったチンピラに……)

 

36: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:04:23.982 ID:u4gljRDf0

バキッ!

青年「ぐあっ……!」ドサッ

DQN「オラ、とっとと筆よこせや! それで仕事は終わりなんだからよ!」

青年「……絶対ダメだ!」

DQN「あー、そうかいそうかい。だったらしかたねえな」

DQN「トドメ刺してやる……!」

「待ちたまえ」

 

37: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:07:03.113 ID:yGt0GzY+0
いいじゃん
悪くない

 

38: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:07:27.795 ID:u4gljRDf0

青年「……!?」

DQN「だ、誰だてめえ!」

筆マン「私は正義の味方・筆マン!」ビシッ!

筆マン「……とあっ!」バッ

スタッ

DQN「筆マン……!?」

筆マン「筆を狙う悪党め、成敗してくれるわ!」

 

39: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:10:23.966 ID:u4gljRDf0

DQN「なにが成敗だ、この変質者がッ!」ブウンッ

筆マン「おっと」スッ…

DQN(筆でパンチを逸らした!?)

筆マン「必殺……フデスラァァァァァッシュ!!!」コチョコチョコチョコチョコチョ…

DQN「あ……あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

DQN「やめっ……やめれっ! やめれえええええっ!!!」

DQN「あふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

40: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:13:40.903 ID:T01O9haIr
筆強い

 

41: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:14:20.306 ID:u4gljRDf0

DQN「……」ガクッ

筆マン「悪は滅びた!」

筆マン「さあ、すぐに会場に向かいなさい! まだ間に合うはずだ!」

青年「ありがとう、父さん!」

筆マン「な……なにをいっている!? 私は筆マンだ! お前の父親などではないっ!」

青年「ごめん! ありがとう、筆マン!」タタタッ

筆マン「……」

筆マン(念のため、様子を見にきていてよかった)

 

42: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:17:31.228 ID:u4gljRDf0

ザワザワ…

司会者「筆が……ないんですか!?」

女「は、はい……すみません!」

司会者「仕方ありませんね……。でしたら、他の筆で……」

女「ダメなんです! 他の筆じゃダメなんです! もう少し待って下さい!」

司会者「うーん、しかし……。スケジュールが……」

書道家(この女の性格から、こうなることは分かっていた)

書道家(集まった客たちもイライラし出している……これで評判はガタ落ちだな)

青年「お待たせしました!!!」

 

43: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:19:52.650 ID:u4gljRDf0

書道家「な……!?」

青年「すいません、遅刻しまして……」

女「ううん、大丈夫だよ」

司会者「えぇと……皆さま、大変お待たせいたしました!」

司会者「それでは女さんによる、“未来への一筆”を披露して頂きましょう!」

女「分かりました!」

青年「受け取って下さい」

女「……ありがと」

 

44: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:23:03.740 ID:u4gljRDf0

女(この筆……ものすごくしっくりくる……)

女(私、今までで最高の文字を書ける!)サラサラッ

女「できました!」


オオッ…

 

45: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:25:04.293 ID:u4gljRDf0

司会者「“飛翔”……この字には、どのような想いを込めたのでしょうか?」

女「今、世の中は……みんな苦しい状況に立たされています」

女「だけど、ここを乗り越えれば、必ず私たちみんなが再び羽ばたける時が来る!」

女「そういう願いを込めて……書きました」

パチパチパチパチパチ…

書道家「……」

書道家(なんという美しい文字だ……。まるで、文字自身が今にも羽ばたきそうな躍動感……)

書道家(私は、なんということを……。二つの才能を潰そうとしてしまっていた……)

書道家(筆を……折ろう……)

 

47: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:26:43.166 ID:QDopSEBX0
支援

 

48: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:29:09.193 ID:u4gljRDf0

司会者「あなたは筆職人さんですか?」

青年「は、はい、そうです! ま、まだ見習い、ですけど……」

司会者「お若いのにすごいですねえ。なぜ筆職人を志したんですか?」

青年「えと……父を、尊敬していた、ので……」

司会者「ほぉー、お父さんも筆職人なんですか」

オォー… スゲー…

父(まったく……せっかくの晴れ舞台なのにあがってしまいおって)

父(だが、よくやったぞ)

 

50: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:32:04.615 ID:u4gljRDf0

司会者「お二人の今後の目標は?」

青年(えぇと、もっといい筆を作って……)

青年「お、女さんに……筆おろししてもらいます!」

女「私も最高の筆おろしをしたいです!」

司会者「え!?」

父(あいつら二人とも、筆おろしの“もう一つの意味”を知らんのかい!)

~END~

 

51: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:35:54.391 ID:9kYVPnlz0
スラスラ読めて面白かった乙

 

52: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:37:36.155 ID:T01O9haIr

夜の筆下ろしはまだ先になりそう

 

53: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:37:52.898 ID:vU48U6//0
あーこれをオチにねなるほど

 

54: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:45:35.699 ID:q5P19h8F0
いいね👍

 

55: 名無しのフリータイム! 2020/07/11(土) 19:54:35.214 ID:QDopSEBX0
面白かった乙

 

引用元: ・女「筆おろししてあげよっか?」青年「ありがとうございます!」

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